実用新案技術評価書の請求

無審査登録が起因の制限

実用新案登録出願は、放棄、取り下げ、又は却下がなければ登録されます(実用新案法第14条第2項)。しかも一度登録されると、権利者は、年金を支払う限り、出願から10年間、その考案(アイデア)を独占することができます。一方、無審査で登録された権利で、独占排他権を実行されると、同じアイデアを思いついて実施している第三者はたまったものではありません。そこで、実用新案法は、登録実用新案を実施する権利者に対して制約を課しています。

それが、特許庁長官に対して、実用新案技術評価を請求し(実用新案法第12条)、その評価書を提示したあとでなければ権利を行使できないという制約です(実用新案法第29条の2)。

技術評価書

つまり実用新案は、登録は無審査ですが、権利行使をしようとするには、技術評価書をもらうための審査が必要ということになります。審査は、特許庁の審査官によるもので新規であることと高度ではないですが容易に想到できるものではないもの等文献による審査が行われます。その技術評価書の審査は、いつでも請求でき、実用新案登録出願が特許庁に係属しているときから登録の後もできます。先にも書きましたが、権利行使前に、技術評価書を入手していれば十分なのです。

請求の時期

ですから、大半の権利者は、権利侵害者を発見してから、技術評価書の請求を行い、評価書を得て、提示して、損害賠償請求(民法第709条)をするのだろうと思っています。技術評価書は、審査ですが簡易ですし、お金もそれなりにかかります。権利行使をしないで牽制のためや、名誉のため、実用新案は取得するものなんだと著者は勝手に思い込んでいます。ほとんどが少し自慢げに「私、実用新案権持ってます!」と証書を事務所や家に飾るものだと。ですから技術評価書を出願段階で請求する人など皆無に近いと踏んでいます。審査をしたいのであれば、特許にすれば良いからです。会社が小規模であったり個人であれば、特許出願人は、資力を考慮して審査請求代が減免・猶予(特許法第195条の2)される機会が与えられます。特許になってからも特許権者は、権利維持年金の減免・猶予(特許法第109条)の機会が与えられうるからです。

前置きが長くなりました。そこで登録実用新案が公開されるまでに、どれほどの技術評価書の請求があるかが気になり、案件の数を調べました。

出願から登録まで

実用新案は、出願から登録まではほぼ半年と言われています。まずそこの検証を行います。登録日と出願日との間で差分を取り、その平均を出してみます。対象は、2014年1月から2016年12月に登録により公報の掲載がされたものです。では、SELECT文でデータベースにアクセスです。

テーブルは、Aとして、以下の構成を有するものとします。

  • 出願日
  • 登録日
  • 種類 (特許、実用新案等)
Select Avg(DateDiff(A.登録日, A.出願日)) As 経過日数
From A Group By A.種類
Having A.種類 = '実用新案'

すると平均は、82.5日でした。著者の半年と聞いていたのは、いつのどこでの話しなのでしょう。実用新案は、ほぼ3ヶ月を経たずに登録されるということになります。ちなみに最短と最長も調べてみました。最短は、45日。最長は、1497日。最短だと出願から1ヶ月半で登録されたことになります。また、最長だとほぼ50月かかったことになります。出願日が2012/01/12で、登録日が2016/02/17です。実用新案権者さま及びその代理人さま、お疲れさまでした。話を戻して…

登録までに技術評価される割合

この平均82.5日の期間に技術評価書を請求した案件は、293件で、全体の1.5%になりました。この数を多いとするか少ないとするかは個人の想定によると思います。著者としては、1%もないのではないかと踏んでいたので、思ったより多かったです。多くの案件が技術評価書の請求をされ、権利行使を視野に入れた権利化が図られていることがわかりました。みなさんの予想はどれくらいでしたでしょうか。現実とかけ離れていなかったでしょうか。今後も自分の思い込みにとらわれず、気になるところをいろいろ調べていきたいと思います。

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